数学の公式と、見ただけで難しそうな問題。
それを見て、俺は眉を顰めた。
この前英語の教科書を借りたときにも思ったけど、奏葉は勉強熱心だ。
俺はついでに参考書も閉じると、机の上を整えた。
そして再びベッドの傍に戻ると、奏葉の足元にあった布団を引っ張って彼女に掛けてやる。
保健室で見たときと同じように、奏葉は穏やかなあどけない顔をして眠っていた。
「黙ってりゃ可愛いのに」
俺は奏葉の寝顔を見つめながら唇に苦笑いを浮かべた。
額に掛かる奏葉の前髪をふわりと一つ撫でて、立ち上がる。
「マ……」
電気を消して部屋を出ようとしたとき、つぶくような奏葉の声が聞こえた。
ドキリとして、奏葉を振り返る。
だが、奏葉はやはり眠ったままだった。