自分の部屋に向かう途中、奏葉の部屋のドアの隙間から漏れる光に気付く。
俺は彼女の部屋の前に立ち止まると、ドアを小さく数回ノックした。
部屋の中は静かで、奏葉からの返答はない。
俺はノブに手を掛けると、そっと捻ってドアを開けた。
「そわ?」
部屋の中を覗き込むと、ベッドに顔を伏せて横になっている奏葉の姿が見えた。
学習机のスタンドはつけっぱなしで、机の上には参考書やノートが広げられたままになっている。
俺は部屋に入ると、ベッドの傍に近づいて奏葉に声を掛けた。
「そわ?寝てる?」
「ん……」
奏葉が小さくうなるような声を上げて、寝返りを打った。
驚いてベッドの傍から後ずさると、うつぶせになって見えなかった奏葉の顔が俺の方に向いた。
だが、起きている様子はない。
俺は学習机のスタンドを消すと、開かれたままの参考書に視線を落とした。