ケチャップを掛けても、目の前にあるハンバーグはやっぱりママのものとは全然違った。
泣きそうな表情をした私を、父の穏やかな目がじっと見つめる。
父は何も言わなかった。
あのときのように怒ったりせず、ただ黙って自分の目の前にあるハンバーグを食べていた。
「でも」
私は次の一口を口の中で噛み締めながら、泣き出しそうになるのを必死で堪える。
「おいしい」
そうつぶやいた瞬間、父の、春陽の、そして真宏の視線が一斉に自分に集まるのを感じた。
私は彼らの視線には何も答えない。
少し顔を上げると、父の隣であの女が今にも泣き出しそうな顔で笑っているのが見えた。