「どういう風のふきまわし?」

追いかけてきた真宏が私の隣に並ぶ。

私は真宏の顔を横目でちらりと見た。
                     
「別にあんたに言われたからでもないし、あの女のためでもない」

ぶっきらぼうにそう答える。


「へぇ。じゃぁ何のため?」

真宏が隣でニヤニヤと笑っているのがわかる。

真宏の手にはめられたようでそれが少し悔しい。

だから私は澄ました顔で前を向いたままでいた。


「私のため」

「へぇ」

真宏は短くそう答えただけでそれ以上何も言ってはこなかった。




私のため。

心の中で、何度もその言葉を繰り返す。


制服のポケットに入れたスマホを探ると、そこにぶら下がる星のキーホルダーをぎゅっと握った。


私のため――……


だから、ママを忘れるわけじゃない。