「いいのよ、まぁ君。私が拾っておくから、もう学校へ行って」
  
あの女は、私を責める言葉は一つも口にしなかった。

それどころか、私を見上げてにっこりと笑いかけてくる。


「ごめんね、奏葉ちゃん。いつも余計なことして。でも、昨日あなたが倒れたって聞いて、とても心配だったの」
        
私を見上げる彼女は、心の底からその言葉を言っているようだった。
                 
にっこりと笑いかけてくる彼女の顔を見ることができない。


突き放しても突き放しても、私にぶつかってくる彼女。

どれだけお人よしなんだろう。

ここまでくると、腹が立つのを通り越して呆れてしまう。


私は小さくため息をついた。
      
そして、あの女に聞こえるか聞こえないかの声の大きさでつぶやく。


「夕飯は、食べようかな」