「放っとかねぇよ。お前が俺を“嫌い”でもだ」
どれだけ真宏の腕の中で暴れても罵っても、彼は私を離すつもりはないようだった。
散々暴れて疲れきった私は、真宏の腕の中で小さく肩を落とす。
「わかった。食べればいいんでしょ……」
真宏の腕から逃れることを諦めてため息をつくと、彼が私を抱きしめていた腕をぱっと放した。
拘束が解かれた私は、手の平で両腕を強くさする。
「はい。とりあえず食え」
真宏はパンの包装を破くと、それを私に差し出した。
仕方がないので奪い取るようにそれを受け取って齧る。
一口齧ると、お腹がぎゅるると音を立て始めた。
慌ててお腹を押さえると、真宏がにやりと笑う。
どうやらお腹がすいていたらしい。
真宏にそれを悟られたことが悔しくて、私は彼から視線を反らすと八つ当たるようにパンを噛み千切った。
「ちゃんと食わないからだよ」
パンに噛み付いている私を見て、真宏が笑う。