俺はパイプ椅子に腰掛けると、眠っている奏葉の顔をじっと見つめた。
奏葉の顔色は悪く、青白かったが、彼女の寝顔にはいつもある眉間の皺はなかった。
穏やかなあどけない顔をして、小さな寝息をたてている。
目の前で眠る奏葉は、幼い子どものようでどことなく頼りなかった。
俺は手を伸ばすと、眠っている奏葉の額にそっと触れた。
細くて柔らかい奏葉の前髪が俺の手に触れる。
そのままそっと奏葉の短くなった髪の毛を撫でた。
「ん……」
そのとき急に奏葉の声がして、慌てて彼女の髪から手を離す。
「うー……ん」
今度はうなるような声をあげた奏葉が寝返りを打つ。
「そわ?」
声を掛けたが、彼女からの応答はなかった。
その代わりに聞こえてきたのは、小さな寝息。