「え?」
「あ、こっちの話」
俺は小さく首を横に振った。
「拓馬。俺、そわの様子見てくるから、お前は茉那のこと頼む」
「あ、あぁ」
俺はまだ青白い顔をしている茉那を拓馬に託すと、保健室の方へと駆け出した。
保健室に行く途中、購買の前を通る。
そこで紙パックのジュースとパンを一つ買った。
奏葉の昼メシ用だった。
夕飯も朝食も食べずに出かけて、この暑い中体育なんかするから倒れるんだ。
そう思いながら、窓の外から燦燦と照りつける日差しに視線を向ける。
カオルさんの作ってくれた弁当を持っていっても良かったけど、奏葉はきっと食べるのを拒否するだろう。
俺はジュースとパンを抱えながら、保健室の扉を開けた。
「失礼します」
保健室の中は、昼休みの割りにしんと静まり返っていた。
休み時間中は常駐しているはずの教師は、今は席を外しているみたいだ。
保健室に入ってすぐ突き当たりにある窓は全開になっていて、カーテンが風を含んでは大きく揺れていた。