「茉那、どうした?」

興奮気味の茉那の肩を掴み、落ち着かせるように彼女の目を真っ直ぐに見据える。

俺と目が合った茉那の顔が今にも泣き出しそうに歪んだ。
    
「真宏……奏葉が、奏葉が大変なの……」

「そわがどうした?」


「奏葉が……」

茉那はひどく動揺していて、俺達の問いかけに答える代わりに奏葉の名前だけを何度も繰り返した。


「茉那。深呼吸して、落ち着いて話して」

拓馬が茉那の背を撫でながら、ゆっくりとした声で彼女に話しかける。

茉那は拓馬に促されながら何度か深呼吸をしたあとに、ようやく俺たちの教室に駆け込んできた理由を話し始めた。


「奏葉が体育の時間に倒れたの。貧血みたいだって。今保健室で寝てるけど、まだ目を覚ましてなくて……」

「え?」

俺は今朝家を出たときに奏葉と交わした会話を思い出していた。


「だからちゃんとメシ食えっつったのに」

考えが独り言となって、思わず声に出る。