★★★


「真宏。お前今日もカオルさんの弁当?」

昼休み、俺の方に近づいてきた拓馬がニヤニヤと口元に笑みを浮かべながら言った。


「悪いかよ」

俺はそうつぶやくと、睨むように拓馬を見上げる。


「いや、別に。じゃぁ俺は購買行ってこよっかなぁ」

拓馬はニヤニヤと笑い続けたまま、わざとらしい声で言った。

毎日飽きもせずカオルさんが作ってくれた弁当をからかってくる拓馬。

それが、もういい加減面倒くさかった。

拓馬が購買に行くために俺に背を向けかけたとき、教室のドアがいつになく大きな音をたてて開いた。


「ま、真宏!奏葉が、奏葉が……」


開いたドアの向こうで、血相を変えた茉那が叫ぶ。


「茉那?」
                
俺と拓馬は、青白い顔で息をついている茉那の側に駆け寄った。

体育が終わったばかりなのか、茉那はジャージの上下を着たままだった。