「大丈夫。俺、お前みたいに胸のない細い体には興味ないから」
冗談まじりにそう言ったとき、奏葉のスクールバッグが俺の方に飛んできた。
「わっ……」
寸でのところで避ける。
振り向くと、奏葉が顔を赤くして涙目になりながら俺の方を睨んでいた。
その顔を見て、思わず吹き出してしまう。
奏葉のその反応が意外だった。
「何マジになってんの?」
そのまま笑い続けそうになるのを堪えていると、奏葉は俺から顔を背けて取り繕うようにスクールバッグを肩に掛け直した。
何も言わずに、俺に背を向けて歩いていく奏葉。
地面を踏みしめるようにして歩いていく彼女の後姿は、ふて腐れた小さな子どもみたいで何だか可愛らしかった。
短くなった髪をふわふわと揺らしながら歩き去っていく奏葉の背中を見送りながら、俺の唇に自然と笑みがこぼれた。