★★★
「そわ、おはよう」
朝食を食べ終えた俺は、二階から降りてくると真っ直ぐに玄関へと向かう奏葉に声を掛けた。
だが、奏葉は俺には目もくれず玄関に鞄を置いて靴を履き慣らす。
「あ、髪」
俺はそう言って、奏葉の頭を指差した。
昨日の夜まで不揃いでめちゃくちゃな方向に毛先が跳ねていた髪は、短く綺麗にそろえられている。
「自分で揃えたんだ?」
セミロングだった奏葉の髪は、ショートボブくらいの短さになっている。
きちんと切りそろえたことで本来の奏葉のくせ毛が活かされて美容院に行ったみたいに綺麗に纏まっていた。
「わりと器用なんだな」
奏葉の髪を見ながら感心したように頷いている俺に彼女が一瞥を投げる。
「奏葉ちゃん、お弁当は?」
玄関を出て行こうとする奏葉の背中に、いつものようにカオルさんが声を掛ける。