「黙れ。おとなしくしろ」
俺は荷物のように奏葉を抱えたまま、家の方に歩き出した。
奏葉がジタバタと暴れるたびに、彼女の体を抱えなおす。
俺の肩の上で散々暴れ続けた奏葉は、家にたどり着く頃にはようやく諦めたのか、すっかり大人しくなっていた。
玄関の前で奏葉を地面に下ろすと、彼女が無言で俺を睨む。
「ぶっさいくな顔」
俺がつぶやくと、奏葉は苛立ちのためか鼻を膨らませるようにしながら、ますます鋭い目で俺を睨んだ。
睨みすぎで、眉間に深く皺がよっている。
俺は奏葉の眉間に人差し指をあてると、その腹で彼女の眉間にできた皺を擦った。
「これ、ぶさいくの原因」
「放っといて」
奏葉が俺の指を手で払いのける。
俺は振り払われた手を奏葉の頭に乗せると、彼女の目線の高さになるように少しだけ屈んだ。
それから、奏葉の耳元に顔を寄せてささやく。
「カオルさんの味方じゃなけりゃいいんだろ?」
「は!?」