「俺、短い髪も好きだよ?」
奏葉の髪を撫でながらもう一度にっこりと笑う。
最初は俺を見上げたままきょとんとした顔をしていた奏葉の顔が、数秒何か考えた後に突然上気した。
「は!?」
奏葉は叫び声に近いくらい大きな声を出すと、もの凄い俊敏さで俺の傍を飛びのいた。
「あんた、意味分かんない」
俺の言った言葉の意味をどう捉えたのかわからないが、奏葉は数歩離れた場所で俺のことを睨んでいた。
暗がりではっきりとは見えないが、心なしか奏葉の顔が赤い気がする。
俺は大股で奏葉に近づくと、彼女の腕を引いた。
「帰るぞ」
「だ、誰があんたなんかと」
俺が腕を引くと、奏葉は反対側に自分の体を引っ張って抵抗してくる。
「ったく。世話の焼ける女だな」
俺はため息をつくと、奏葉の腰に腕を回し彼女の体を持ち上げた。
「な、何すんの?離して!降ろしてっ!!」
手足をばたつかせる奏葉の体を抱きかかえて、肩に支えるように乗せる。
華奢な奏葉の体は骨ばっていて、さっき抱えたときと同じようにやっぱり軽かった。