「あんた、ほんとにウザイ」
奏葉が俺を睨みながら、低い声でつぶやく。
「あの女が好きなら……あの女の味方なんだったら私に関わらないで」
奏葉の肩は俺を睨んだまま小さく震えていた。
「あの女の味方、か」
どこまでもカオルさんに拘るんだな。
「何?」
俺のつぶやく声を聞いて、奏葉が怪訝そうに眉を寄せる。
カオルさんを悲しませて傷つけているのが奏葉なら、奏葉を傷つけているのはカオルさんの存在。
カオルさんと同じになってしまうからという理由で自分の髪の毛を切り落としてしまうくらい、奏葉も傷ついている。
奏葉のカオルさんに対する異様なまでの拘りと、彼女の短く不揃いな髪を目の当たりにして、そのことを強く感じた。
奏葉の気持ちを全て理解することはできない。
でも、彼女のことをこのままここに放っておくこともできなかった。