「奏葉ちゃん、どうしたの?その髪……」
カオルさんが唇に手をあて、大きく目を見開く。
玄関には、乱雑に切られた短い髪の毛の奏葉がいた。
さっきの奏葉の行動を見ていなければ、まるで誰かに襲われて無理やり切られたみたいに、奏葉のその髪は不揃いでめちゃくちゃだった。
奏葉はカオルさんを振り返ると、吊りあがった目を細めた。
そして、カオルさんの顔を射るようにじっと睨む。
「あなたのせいだから」
奏葉は突き放すようにそう言うと、玄関から出て行った。
乱暴に閉められた扉を途方にくれて見つめるカオルさん。
その姿があまりに淋しそうで、俺の胸が鈍く痛む。
「まぁ君、私のせいって……」
カオルさんの目が不安げに俺を振り返る。
俺は腿の横で拳を強く握り締めながら、小さく首を横に振った。
「カオルさんは何も悪くないよ」