「それ」

「ん?」

俺が指差した方に、カオルさんが視線を向ける。


「それってさ」

俺は器に盛られた大量のエビを指しながらカオルさんに尋ねた。


「それって、そわの分も含まれてるの?」

「え?」

カオルさんが俺の方を振り返り、眉根を寄せる。


「今日もそわの分まで作るの?」

もう一度問うと、カオルさんは頬を引きつらせながら笑う。


「何でそんなこと聞くの?当たり前じゃない」

俺は何だか悲しくなって、切ない目でカオルさんの笑顔を見つめた。


「何でそわの分まで作るのが当たり前って思えんの?あいつのカオルさんに対する態度、フツーじゃないじゃん」

つい強い口調でそう言うと、カオルさんがいつになく悲しそうな目で俺のことを見つめ返した。


悲しくて、淋しい目――。