拓馬と茉那が帰ったあとも、奏葉は俺の部屋から出てこなかった。
ドアに耳をつけて中の様子を伺ってみたが、しんと静まり返っていて物音は聞こえてこない。
しばらく二階の廊下をうろうろ歩き回ったが、そこにいてもしょうがないので一階に降りた。
リビングに入ると、カオルさんが台所で夕飯を作っているのが見える。
俺がリビングに入ると、それに気付いたカオルさんが顔を上げて笑った。
「あら、まぁ君。どうしたの?」
「いや、今日の夕飯は何かなぁって」
「今日はエビフライよ」
カオルさんは手元に準備してある大量のエビを器ごと持ち上げると俺に見せてくれた。
それを見て、俺は少し笑う。
台所に近づくと、料理を作るカオルさんの姿を傍でじっと見つめた。
「なぁに?」
あまりに俺がじっと見ていたせいか、カオルさんが不思議そうな顔で首を傾げる。