「返してよ!」
拓馬から鋏を取り返そうと、座っていた茉那と春陽の肩を掻き分けるように押しのける。
「そわっ!」
そのとき、腹部が押されるように少し圧迫され、拓馬の方に進もうとした体が後ろに引っ張られた。
振り向くと、真宏が私の腹に腕を回して私が進むのを邪魔していた。
「はなして!!」
私は拳を握ると、腹に回された真宏の腕を力任せに殴った。
だが、真宏は腕を放すどころか声ひとつあげない。
「うぅぅぅ……」
唇を強く噛み締めながら、真宏の腕に何度も何度も拳を振り落とす。
そうして何度目か真宏の腕に拳を振り落としたとき、私の体がふわりと宙に浮いた。
床から離れた足がやけにスカスカとする。
気付くと、私は真宏の腕にお姫様抱っこのような状態で抱きかかえられていた。
「ちょっ、おろしてよ!」
抱きかかえられたまま暴れる私を、真宏が軽々と抱えなおす。