そう心の中で願い続けていたのに、彼らはあの女の話をやめなかった。

    
私があの女を憎んでいるのを知っていて、わざとここで彼女の話題を出している――?

次第に、そんな被害妄想的な考えまで頭に浮かんでくる。
       
彼らは散々、あの女のことを褒めちぎった。
     
そしてあの女の話題がようやく終わったそのとき、真宏が背を向けている私に言った。


「そわ、お前も茉那や春陽ちゃんみたいにもっと髪伸ばせばいいのに。そしたら、少しは女っぽくなるかもよ」



髪を伸ばす――?

茉那や春陽みたいに?


そして、
  
あの女みたいに――……?


「ふざけんな……」

「そわ?」

私の心の中で、我慢していた何かがぷっつりと音をたてて途切れた。

私はペン立てに立ててあった鋏を掴むと、それを強く握り締めて真宏たちを振り返った。


「奏葉?」

「お姉ちゃん?」

眉尻を上げ、肩を怒らせながら振り返った私を見て、そこにいた全員が不可思議な顔で首を傾げる。

彼らの顔を見ると、さらに怒りが増した。


足先からぐんぐんと湧き上がってくる、熱くてそれでいて静かな怒り。