「理由聞きたい?」

拓馬のその声で、顔を見なくても彼がニヤニヤと意地悪く笑っているだろうということが想像できた。


「聞きたい!」

「拓馬!!」

だんだんと、背後がにぎやかになってくる。

あまりにぎやかなので、興味もないのに私もその理由が気になってきた。

気にしていないフリをしながら、こっそりと耳を傾け続ける。


「それは、カオルさんの髪が長くて綺麗なストレートだから」

「拓馬っ!!」

拓馬がだいぶ長いこと勿体つけたあとに、ようやくその理由を口にする。

そんな拓馬を牽制するように、真宏が低い声で怒鳴る。

けれど、拓馬の口からあの女の名前が発せられた瞬間、私の彼らへの関心は煙のようにすっと消えた。


何、その理由……?

くだらない。


「え?それってどういうこと?」

だが真宏に夢中になっている茉那と春陽にとって、拓馬の口から発せられたその理由はかなり重大な問題であるらしかった。

二人して真宏と拓馬を問い詰める。