「……」

怒りのオーラを体中から放ちながら無言で彼らを見つめていると、私が帰ってきたことに一番最初に気付いた真宏が、軽く片手を振りあげた。


「おぅ、そわ。おかえり」

「おかえりって……」

私は怒りに震える手でスクールバッグをぎゅっと握り締めた。


「何で勝手に私の部屋に入ってんのよ!」

「まぁいいじゃん。みんなお姉ちゃんが帰ってくるのを待ってたんだよ」


春陽がそう言って呑気に笑う。

私はため息をつくと、学習机に座りスクールバッグから参考書を取り出した。

参考書を出すときに、放課後蒔田から借りた本が目に入る。

私はスクールバッグの中のその本を指の腹でそっと撫でた。

革製の表紙のそれは、星の本だった。


「そわ、勉強すんの?みんな来てんのに」
            
はっとして顔を上げると、真宏が私の机の横に立ってこちらを覗きこんでいた。

私は借りた本に触れていた手を離すと、それを隠すように慌ててスクールバッグを上から押さえた。