本を受け取った奏葉が、はにかむように蒔田に笑いかける。 今まで一度も見たことのないくらい、優しい顔をして。 複雑な思いが胸を過ぎり、俺は唇を固く引き結んだ。 「真宏?」 拓馬が、奏葉と蒔田の姿を睨むように見つめていた俺に声を掛ける。 「笑えんのかよ……」 「へ?」 「真宏?」 不思議そうに問いかける拓馬と茉那。 「あいつ、ちゃんと笑えるんじゃん」 俺は奏葉の横顔を見つめながら、小さな声でつぶやいていた。