やけに「茉那、茉那」と言う拓馬のことを怪訝に思って振り返ると、拓馬が耳元でなぜか奏葉の名前をささやいた。


「は!?」

思ってもみないことを尋ねられて、思わず大声を出して立ち上がる。


どうして俺が奏葉なんかを好きにならなくちゃなんないんだっ!?


あんな愛想のない、冷たくて可愛げ気のない女。

拓馬を見下ろして睨む。


「何っでそうなるんだよ?あんなやつ論外!頼まれたって断る!!」

「あ、おぉ……」

俺があまりにも強く否定したため、拓馬が本気で驚き後ずさる。

それからすぐに、授業の開始を知らせるチャイムが鳴った。

でも、俺の怒りはなかなか治まらなかった。