「じゃな、そわ」

真宏はそのまま若菜を無視し、私にだけ手を振って教室へと戻っていった。


真宏の姿が完全に見えなくなると、東堂 若菜は艶々と光るグロスのついた唇をぎゅっと噛み締めながら私を睨みつけてきた。

まるで鬼のような形相で。


若菜のその顔を見て、白けた気分になる。

気になる男が目の前からいなくなったら、態度を豹変させるのか……

茉那がぶりっ子だというのなら、若菜の方がよっぽどぶりっ子だ。


さっき聞いた若菜の甘ったるい声を思い出し、私は小さく身震いした。