「そわ」

つかまれた反動で、私の体が後ろによろける。


「おい、大丈夫か?」

よろけた私の背中を、誰かがそっと戻すように押した。

振り返ると、私の後ろに立っていたのは真宏だった。

私がよろけたのは、真宏に引っ張られたことが原因らしい。


「真宏!」

睨むように真宏を見上げる私の隣で、茉那が嬉しそうに高い声を出す。


「おぅ、茉那。お前も今日うちに遊びに来れんの?」

「うん、行くよ」

真宏の問いかけに、ますます嬉しそうな声を出す茉那。


「あんたのうちじゃないでしょ」

すぐさま冷たい声で突っ込んだけど、真宏は私の言葉など聞いてはいなかった。


「それよりさ、そわ。英語の教科書貸して」

真宏がそう言って、私に手の平を差し出してくる。