「じゃぁ、よければいつでも来てね」

蒔田は私に笑いかけると、プリントの束を抱えなおして職員室の方に歩いていった。


「委員長と何か話してたの?」

駆け寄ってきた茉那が不思議そうに首を傾げる。


「いや、別に」

私は短くそう答えると、茉那を教室の方へ促した。


「委員長って、いつ見ても爽やかだよね。頭もいいし」

教室へと戻る廊下を歩きながら、茉那が蒔田が去った方を気にするように何度かちらちら振り返る。

私は蒔田を気に掛ける茉那を呆れ顔で見つめた。


「茉那、あんたには大好きな“恩人”がいるでしょ」

私が皮肉を言うと、茉那が笑ってぺろっと小さく舌を出した。

 
「真宏は特別。今言った委員長のことは、率直な感想だよ」

「あっそ」

茉那とそんなことを話しながら教室に足を踏み入れようとしていると、後ろから誰かに肩をつかまれた。