「謝らなくてもいいよ」
私に向けられた蒔田の笑顔があまりに爽やかで、彼の顔をうまく見れずに視線を外す。
そのとき私は、彼が手元に英語のプリントの束以外のものを持っていることに気がついた。
「それ……」
「え?」
彼の手元を指した私の指の先を、蒔田の視線がゆっくりと追う。
蒔田の視線の先がそれに辿りつくと、彼は手に持っていたものを持ち上げて笑った。
「あ、これ?天文部で使ってた資料と先生に出すレポート。職員室に行くついでに提出しようと思って」
蒔田が持ち上げたものは、A4台に拡大された星の写真だった。
「星、好きなの?」
蒔田が持ち上げた星の写真に目を奪われている私に、彼が尋ねた。
「あ、えっと。そう、なのかな……」
他人とあまりそういう話をしたことがないから、つい返答がしどろもどろになる。
それを聞いた蒔田はまた笑った。
「そうなのかなって」
「委員長って天文部だったんだ」
「うん。あんまり目立つ部活じゃないし、活動も地味だけどね」
そう言いながら、蒔田が苦笑する。