話すんじゃなかったな……
今さらながら、そのことを後悔する。
茉那とは高校に入ったときに初めて同じクラスになって顔を合わせた。
くっきりとした二重の大きな瞳に、唇の薄い口角の上がったアヒル口。
可愛い顔に小柄で華奢な外見をした茉那は、クラスの中でも目を惹いた。
だけどそのとき私が持った彼女の印象は、可愛い外見にぴったりと合うぶりっ子。
男子に話しかけられると、声のトーンや表情がころっと変わる。
そのせいで茉那は徐々に女子から嫌われ始め、クラスの中で浮いていた。
ただ、クラスの中で浮いていたのは私も同じ。
私は誰に話しかけられても反応が薄く、そんな私の周りからは自然と人が減っていった。
「とっつきづらい」とクラスの女子達が噂をしていたのも知っている。
でもそんなことは全く気にならなかった。
この高校に入ったのは、友達と仲良しごっこをするためじゃない。
地域でも有数の進学校であるこの高校に入学できれば、ママが喜んでくれると思ったからだ。