「もうみんな提出しましたか?持って行きますよ?」
委員長の蒔田 光輝(マキタ コウキ)が教壇の前で大きな声で呼びかける。
だが、誰もそれには反応しない。
蒔田はさっと教室を見回すと、教壇に置かれていたプリントの束をまとめて教室を出て行った。
「茉那。まだ終わってないの?」
私は茉那の方に歩み寄ると、呆れ顔で彼女を見下ろした。
「ごめん、もう終わる」
「一時間も授業あったのに、その間何してたの?」
私に問われ、茉那は申し訳なさそうに肩を竦めた。
「え、っと。授業が始まると何だか急に眠くなっちゃって……」
私は茉那のその言い訳に何も言わない変わりに、冷たい視線を彼女に送った。
「も、もうできるよ!」
茉那がせわしなくシャーペンを動かし、最後の問題を書き写す。
「できた!」
プリントの問題を全て写し終えると、茉那は達成感のこもった声で叫んで、氏名の欄に自分の名前を書いた。