私の家に遊びに来ることですっかり舞い上がってしまった茉那は途端にプリントを写す作業にすら身が入らなくなってしまった。


「今日は春陽ちゃんもいるの?楽しみ」

シャーペンを放り出して、天井を見上げながら何かを妄想する茉那。


「プリント、返してもらっていい?」

呆れて自分のプリントを茉那の机から摘み上げると、彼女が青ざめて首を振った。


「だ、だめだめ!ちゃんとやります」

茉那は私の手からプリントを奪い取ると、今度こそ真面目にせっせと私の答えを写し始めた。

茉那のそんな単純な性格が面白くて、クスリと小さく笑ってしまう。

茉那の作業が順調に進んでいくかをしばらく見守ってから、私は自分の席に座って一時間目の授業の準備をした。


一時間目の授業が終わると、委員長が教壇に立って英語のプリントを集め始めた。


「蒔田(マキタ)、全員分集まったら職員室に持って来い」

英語教師が委員長にそう指示を出して教室を出て行く。

私のプリントは、茉那の手元にある。

茉那の方をチラリと見ると、彼女はまだ熱心に私のプリントの答えを写しているところだった。