「へ?奏葉?」

茉那がぽかんとした表情で私の顔を見上げる。

私は苦笑いを浮かべると、ため息混じりに言った。


「いいよ、写して。今回だけだよ」

それを聞いた茉那の顔が、光が差したようにぱっと明るくなる。


「ありがとう!奏葉!」

茉那は立ち上がると、スクールバッグを持ったままの私を興奮気味にぎゅっと抱きしめた。


「ちょ、茉那……」

私は抱きついてきた茉那を引き剥がすと、眉をしかめる。

嬉しそうな顔でプリントを写し始めた茉那を見て、私はついさっきまで忘れていたあることを思い出した。


「そういえば、今日森宮くん?……がうちに来るらしいよ。茉那も遊びに来る?」

必死にシャーペンを動かしていた茉那の手が、瞬間的にぴたりと止まる。

満面の笑みで私を見上げた茉那は、嬉しそうに大きく首を振って頷いた。


「行く!行く行く!!」