学校に着くと茉那はもう既に登校してきていて、自分の席に座って必死で何かを書いていた。
「おはよ、茉那。真剣に何してんの?」
私が声を掛けると、茉那が泣き出しそうな顔で私を見上げる。
「奏葉ー」
「何?」
茉那のその形相に、思わず一歩後ずさりする。
「あたし、今日提出の英語のプリントやるの忘れちゃったの。一時間目の英語の授業のあとに委員長が集めるんだったよね?あたし、英語の成績悪いから絶対出さなきゃいけないのに……どうしよ。このままじゃ補習だよ」
茉那の机を見ると、辞書やら教科書やら文法の参考書やら。
彼女が持つありったけの英語に関する本がプリントの上に散乱していた。
それを見て呆れている私の前で、茉那がひぃひぃと泣き声に近い悲鳴をあげる。
私はため息をつくと、スクールバッグの中から自分の英語のプリントを取り出して茉那の机の上に置いた。