「星?」
つられるようにして、俺も空を見上げる。
だが街灯の光が明るすぎて、空の星はほとんど見えなかった。
見えているのは遠くに浮かぶ細長い三日月と、明るく大きな一等星がひとつ。
もう少し見えないだろうかと空を見上げて目を凝らしていると、俺のすぐ傍で何かがキラリと光った。
振り向くと、奏葉が顔の前で何かキラキラと光るものを持っていた。
それが結び付けられているのは、奏葉のスマホ。
よく見ると、それは星の形をした銀のキーホルダーだった。
鈍い光を放つその星になぜか心が惹かれ、おもむろに指を伸ばす。
すると奏葉が、さっとそれを自分の方に引き寄せた。
そしてそのままスマホと共に制服のポケットにしまう。
「ママの星」
奏葉が淋しそうな声でつぶやく。
奏葉の言っている意味が分からず、俺は彼女の目をじっと見つめた。
だが、奏葉はそれ以上は何も言わず俺を見て笑った。
さっき見たほんの少し優さのある微笑みではなく、幾度となく見ている唇の端を持ち上げた皮肉っぽい笑みで。