「君にはとてもすまないことをしていると、いつも思ってる」
祐吾さんの言葉に、カオルさんは無言でずっと俯いていた。
祐吾さんの声も言葉もとても穏やかだったけれど、その横顔は自分もとても辛いのだと静かに訴えかけていた。
奏葉がカオルさんに対して反発すれば、いつもカオルさんの方を庇い奏葉を怒鳴りつける祐吾さん。
でも、祐吾さん自身も本当はそれを望んでいるわけではないのだ。
俺は今ここに座っていることが場違いな気がして、静かに立ち上がった。
「まぁ君?」
突然立ち上がった俺を、春陽が不安げな瞳で見上げる。
カオルさんが暮らすこの家は、奏葉を中心に少しずつバランスが崩れてる。
俺は春陽にそっと笑いかけると、リビングを出て玄関へと向かった。
靴を履き、外に出る。
夜空は晴れていたが、風は少し肌寒かった。