玄関を飛び出した俺の数十メートル先に、奏葉の背中が見える。
俺は走って彼女を追いかけると、その隣に並んだ。
「おい」
隣に並んだ俺は、奏葉に呼びかける。
だが奏葉はイヤホンをつけているのをいいことに、俺の存在に気づいていてわざと無視してきた。
奏葉がつけたイヤホンから、シャカシャカと小さく音漏れがしている。
「おい!」
イヤホン越しに、奏葉の耳元で叫ぶ。
それでも彼女は俺に全く反応しなかった。
ムカつく。
腹が立った俺は、奏葉のイヤホンの紐を引っ張るとそれを耳から引き抜いた。
「おい、そわ!無視すんなよ!」
イヤホンが取れた耳元でそう叫ぶと、奏葉がようやく不機嫌そうな目で俺を見上げた。