「あ、奏葉ちゃん、待って。お弁当……」
耳にイヤホンをつけて二階から降りてくる奏葉をいつものようにお弁当を持って追いかけるカオルさん。
俺は食卓に置かれた自分用の弁当をつかむとスクールバッグに入れた。
実家にいるときはよく購買でパンを買っていたが、この家に住むようになってからはカオルさんが俺の分まで弁当を作ってくれる。
昼休みの度に拓馬にからかわれるけど、ありがたいから毎日ちゃんと持って行く。
俺はスクールバッグの蓋を閉めると、さっさと玄関を出て行こうとする奏葉を追いかけた。
そして、彼女の隣に並ぶとイヤホンの紐を引っぱってそれを外す。
イヤホンを片耳からとられた奏葉は、心底嫌そうな顔で俺を睨んだ。
そのとき、俺は奏葉の頬にある異変に気づいてはっとした。
俺と同時にその異変に気付いたカオルさんの、整った形の良い眉が歪む。
「奏葉ちゃん、そのほっぺたどうしたの?」