四年前までは、ママの部屋のドアの隙間から光が漏れているととても嬉しかった。
閉じたドアの向こう側から、ママの存在を確かに感じることができたから。
ママが病院から家に帰ってきている、その喜びを噛み締めることができたから。
でも、今このドアの向こう側にいるのはママじゃない。
それがひどく悲しかった。
私はママが使っていた部屋のドアから目を背けると自分の部屋に入った。
学習机に向かい、小さくため息をつく。
スクールバッグを漁って授業で使っている数学のノートと問題集を取り出すと、それらを無造作に開いた。
ノートに写し取られた公式を確認しながら問題を解く。
数学の問題を解くのは好きだった。
解いているときは、問題以外のことは何も考えなくていい。
あの女のことも、父のことも頭の中からすっかり消える。