茉那がにこにこと笑っていると、私もほんの少しだけ笑いたい気分になる。
茉那は学校の中にある、私の小さな安らぎの場所だった。
ママが死んでから人と深い関わりを持たなくなった私が、唯一ほんの少し気を許しているのが茉那だった。
茉那もそのことを何となく感じ取っているのか、私がときどき不機嫌になったり、当たったりしても私を見放さないでいてくれる。
最初に茉那に懐かれたときは正直うっとうしくも思ったけれど、今では私の方が茉那に助けられているんじゃないかと思う。
もし茉那がいなければ、あの家とただ目的もなく通っているだけの高校との間で私は窒息して潰れてしまっていた。
「じゃぁ、春陽ちゃんに言っといて。今度春陽ちゃんの都合がいいときにまた遊びに行くって」
茉那の声が明るく弾む。
私はそれに頷いた。