「ねぇお姉ちゃん、もう四年経つんだよ?そろそろ許してあげてもいいんじゃない?じゃないとかわいそうだよ、おかあさん」
     
春陽があの女を差して、“おかあさん”と言う。


「違う。四年しか経ってないの。それなのにどうしてあんたはあの女を“おかあさん”なんて呼べるのよ?私、先行くから」

           
かわいそうなのは、あの女じゃない。


私は春陽にそう言うと、一人で駅の方に歩き出した。


「お姉ちゃん」

これ以上春陽と会話をしていると、私は彼女にすら何を言ってしまうか分からない。

後ろから聞こえる、春陽の困惑した声を無視して私は歩く。

           
かわいそうなのは、あの女なんかじゃない。


かわいそうなのは、パパにも春陽にも忘れられてしまっているママだ。