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「昨日、ちゃんと家に帰った?」
それが教室で顔を合わせた茉那の第一声だった。
「あ、うん」
「そっか、それなら良かった」
茉那はそう言ってにっこりと微笑んだきり、昨日のことについては一切触れてこなかった。
茉那を家に招待しておきながら機嫌を悪くして彼女をそのまま置き去りにしたことに多少なりとも罪悪感を感じていた私は、彼女の態度にすっかり拍子抜けしてしまった。
「茉那、昨日ごめんね」
茉那が何も言ってこないことでさらに罪悪感を感じた私は、俯きがちに謝る。
「いいよ、別に気にしてないから」
茉那は本当に何ともない様子で、顔の前で手の平をひらひらと横に振る。
「春陽ちゃんとも仲良くなれて楽しかったよ。結局拓馬くんと一緒に夕飯までご馳走になっちゃった」
「へぇ」
小さな声で応じると、茉那が私の顔色を伺うように見上げた。