玄関のドアを開けると、家の中はひっそりと静まり返っていた。

私はできるだけ音を立てないように静かにドアを閉めると靴を脱いで家に上がった。

玄関のマットの上にはスリッパが二足置いたままになっている。

茉那と拓馬は何時頃までうちにいたのだろうか。


今さらながら、茉那に悪いことをしたと思った。

明日学校に行ったら、茉那に謝ろう。


私は出しっぱなしになっているスリッパを摘み上げるとスリッパ立てに片付けた。

そのまますぐに二階には上がらずに、リビングへと向かう。


何だか今日はひどく喉が渇いていた。

台所の電気をつけると、水道の蛇口を捻る。

食器乾燥機の中に立てかけられてあったコップを手に取ると、それにいっぱいの水を注いで一気に飲み干した。

コップを流しに置いて食卓の方へ顔を向けたとき、昔私がよく座っていた席の前に何かが置いてあるのが見えた。

それが何なのかすぐに検討がついて、小さくため息をつく。