それでも奏葉は“優しい”のだろうか? 俺にはそうは思えなかった。 だって、本当に“優しい”人間はこんなことしない。 家族を、自分に“優しさ”を向けてくれる人を、こんな風に傷つけたりはしない。 俺はリビングの電気を消すと、静かに二階の部屋へと戻った。 俺が部屋に戻ったちょうどそのとき、玄関のドアが開く音が聞こえた。