「私の部屋に入ってこないで!勝手なことしないでよ!」

部屋に入ってきたカオルさんを見た奏葉の顔付きが一瞬にして変わるのがわかった。

奏葉に大きな声で怒鳴られて、カオルさんの肩が小さく震える。


「ごめんね、奏葉ちゃん……」

床にお盆を置いて、哀しそうな目をして弱々しい声で謝るカオルさん。

カオルさんは何も悪いことなんてしていないのに……

見ている俺が切なくなった。


「お姉ちゃん!」

奏葉を諭そうとする春陽を、カオルさんが首を振って静止する。

カオルさんは茉那や拓馬に微笑みかけると、小さく会釈して奏葉の部屋から出て行った。


「お姉ちゃん、いい加減にしなよ。友達来てるんだよ?」

立ち去るカオルさんの背中を複雑な表情で見送ってから、春陽が奏葉を責める。