「ねぇお姉ちゃん、いい加減大人になりなよ。パパだって“オトコ”なんだから。恋だってする」
しかめ面のまま歩き続ける私に、春陽がやたら大人びた口調で言う。
中学に入って、春陽は急に生意気になった。
ママがいる頃は私のあとをついて回る泣き虫だったのに、今は大人みたいに一丁前のことを私に向かって言ってのける。
「何が“オトコ”なんだから、よ。ママが死んでまだ四年しかたってないんだよ?それなのにパパはあの女をママが死んでからたった二年で家に連れてきた。ママに対して何も感じないの?どう考えても裏切りだよ」
私の言葉を聞いて、春陽がまた肩を竦める。
「でもさ、パパは生きてるんだし……恋はいつやってくるかなんてわかんないじゃん」
「私にはあんたのその思考回路が分からない」
睨みつける私を見て、春陽が笑う。