それまであたしの中には、理系に進むなんて考えは一切なかった。


 選ぶ選ばないじゃなくて、理系は『選べない』と思っていたから。


 だからあたしは、いままで知らなかったんだ。


 苦手なことが減っていくと、幅広い選択肢の中からひとつを自分で選べるんだ、って。


 悩む楽しさとか、選ぶ楽しさとか、あたしはそういうことをいままでできていなかったんだなって。


 もちろん、理系を選ぶにはいまの成績では不十分だ。


 けれど、頑張れば選択できるものが増えるっていう可能性を、あたしは生まれて初めて知ったんだ。