「お母さんのせいじゃないよ」


 それは本心だ。


 それよりも、あたしは家庭教師を雇うことがそんなに高額だったなんて知らなかったし、むしろ謝るべきはあたしの方だ。


 バカでごめん、って。


「茉菜は、桐島さんのことが好きなの?」


 唐突なお母さんのその一言に驚くけど、母親ってこんなことまでわかっちゃうんだって思ったら、隠し事なんてできないね。


 小さく頷くと「やっぱりね~」なんてゆるやかに笑った。


「桐島さん、かっこいいものね」


「うん……」


 素直に答えるあたしの目線に合わせるように、お母さんは少しだけかがんであたしの目を見つめる。