「……桐島さん、あたし不安なんですけど」


 テーブルの下で、拳をぎゅっと握りながらつぶやいた。


 桐島さんはあたしをまっすぐ見てくるから、少しだけ視線を落とした。


「なにが不安?」


 なにって、そう言われても。


 勉強もだし、会えなくなることが不安だ。


 だけどそんなことを言えるわけもない。


 彼女でも友達でもないただの生徒のあたしが、そんなこと。


 うまく取り繕う言葉も出てこなくて黙ったままのあたしに、桐島さんが口を開く。


「まあ、急に指導時間減って不安なのはわかるけど。でもおまえ、この時間以外にも自分でちゃんと予習復習やってるみたいじゃん? そんなに心配しなくても、この調子なら普通に高校は卒業できるだろうし、進学も大学選べば大丈夫だろ。教えてて思ったけど、おまえ飲み込み早いし大丈夫だよ」


 ふつうはそう思うよね、あたしが不安なのは勉強のことだって。


 あたしを励ますような優しい言葉と表情に、心が揺れ動く。


「それもそうだけど、あたしはっ」