わたしは朝に弱い。
 低血圧なのか、朝はどうしても眠くて仕方ない。
 リンも同じ。だからその言葉を聞いた途端、強い眠気に襲われた。
 大きな欠伸が二つ。眠くて目を擦って、すぐに寝てしまった。
 次に気がついた時は、起こしてもらった時だった。車は目的地周辺に着いていたらしく止まっていた。運転手は既にお昼のオニギリを食べながら、目覚めたわたしに向かって笑っていた。
「なかなか面白い寝顔だった。貴重な物を見せてもらった」
「女の子の寝顔を覗き見るのは無礼だよ」
「安心しろ、長時間じゃない。それより、今はこっちを見たらどうだ?」
 真上を指差す。そこには、綺麗な空があった。

 灰色の一つもなく、虹色の閃光が綺羅綺羅散って、真白い雲が流れていく。
 まるで合成映像のワンシーン。
 それほどまでに現実味がなく素敵だった。

 これは現実だと、感覚が教えてくれる。
 今までに見た事がない現実だと。
 どうだ、と誇らしげに言う。この人が作ったわけでもないのに、どうして偉そうなのか。
 でもわたしは頷いた。
 本当に綺麗で、連れてきてくれた事が嬉しくて。
 教えてくれた事に感謝したから。