ただいま、と呑気に返事をする。
 賑やかな声が奥の間から聞こえていた。
「……いい匂いがするな。ちょうど、夕食の仕度中か」
「お帰りなさい」
 二人の声が同時に奥から聞こえた。いつもはインスタント食品を買いに行くのだが、それだけに新鮮だった。
 早足でリビングに向かうと、ちょうど作り終えた料理を運んでいるところだった。
「おにいちゃん、お帰りなさい」
「お帰りなさい、ショウさん。ご飯、ちょうど出来たところだから」
「……ああ、なんて予想外だ」
「失礼な事言っている?」
「いや、だって、なあ」
 並んだ数々の料理は、少し歪ではあるが美味しそうだった。食欲をそそる匂いも見事。
 空腹のショウは、今にもがっつきたい衝動に駆られる。
 三人揃っていただきますをしない事には食事は始めない。それが掟だ。
 みんな揃ったところで、と陽気に音頭を取る。
 それに同意しはしゃぐリン。ショウはきわめて冷静を装いながら、三人揃って手を合わせた。
 いただきます、と。
 三人家族の夕食が始まった。